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遺留分お役立ち情報(基礎知識)
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相続人の遺留分を侵害する行為には遺贈、死因贈与、贈与があります。
受遺者が遺言書を作成して、特定の人や団体に遺産を贈ったり寄付したりすることです。遺贈者による一方的な意思表示(単独行為)によって行います。
「私が死んだら、…」というように、贈与者の死亡を条件として、生前の贈与者と受贈者との間で交わされる贈与契約です。遺贈と違って遺言書の作成は不要で、口約束でも贈与契約は成立するので、契約書もいりません。もっとも、口約束だけでは後に争いになった場合に贈与契約を証明できなくなるなどの弊害があるので、書面に残した方が無難です。
契約の効力が生じるのは条件成就時、つまり贈与者が死亡したときです。
贈与者の生前に受贈者との間で行われる贈与契約です。相続人に対する特別受益にあたる生前贈与も含みます。
自己の遺留分が侵害されている事実が確認できた場合、いずれの遺贈・贈与を受けた者に対してについて侵害額請求すべきでしょうか?
これについては、民法1047条で以下のように定められています。
遺贈と贈与がなされた場合には、まず遺贈を受けた者に対して侵害額請求を行い、それで満足が得られない場合には、贈与を受けた者に対して請求することになります。この順序は関係当事者で変更することはできません。
本事例の場合、遺留分を侵害されたEとしては換金に手間のかからない現金をBに請求したいはずですが、法律では財産の種類による区別はしていません。したがって、遺留分全侵害額について、いきなりBに請求することはできません。
本事例では、遺贈と生前贈与以外に死因贈与が行われています。遺留分侵害額請求における死因贈与の扱いについては法律では明確な規定はありませんが、実際の裁判に参考となる例があります。東京地裁平成12年3月8日判決が、まず遺贈、次いで死因贈与、そして生前贈与という順序で判断しました。実務でもこの判断に従って運用されています。
以上をもとに本事例をみますと、まず遺贈を受けたDが遺留分侵害額を負担します。それでも満足が得られない場合には、死因贈与を受けたCに、次いで生前贈与を受けたBが負担することになります。
複数の生前贈与が行われた場合や、生前贈与と死因贈与が行われた場合などです。
贈与が複数ある場合には、相続開始に近い贈与の受贈者から順に過去の贈与の受贈者へと遡って遺留分侵害額を負担することになります。つまり、新しい贈与から遺留分侵害額請求の対象になります。
生前贈与と死因贈与がある場合には、まず死因贈与が対象となります。死因贈与の受贈者の負担をもってしても遺留分侵害額の満足を得られない場合には、生前贈与の受贈者が侵害額を負担することになります。
すべての贈与が遺留分侵害額請求の対象となるわけではありません。その範囲は令和元年7月1日民法改正により、以下のものに限定されています。
まずは死因贈与を受けた長男Aが遺留分侵害額を負担することになります。
Aの負担によっても侵害額の満足を得られない場合には、二男Bが侵害額を負担します。
それでもなお不足する場合には、三男Dに請求したいところですが、相続開始の10年以 上前に行われた贈与であり、かつ、贈与当事者は遺留分侵害について知りません。したがって三男Dには遺留分侵害額請求はできません。
遺贈は相続開始時、つまり被相続人の死亡時に効力が生じます。複数の遺贈が行われていた場合は、すべての遺贈の効力が相続開始時に同時に発生することになります。したがって遺贈どうしの時間の先後による順序はつけられず、各受贈者が受けた利益に応じて割合的に侵害額を負担します。
相続分の指定遺言や「相続させる」旨の遺言についても、遺贈と同順位とします。これらの行為も、相続開始時に同時に効力が発生するため時間の先後がないことから、それぞれ受けた利益の割合に応じて侵害額請求の対象となります。
まず、Dの遺留分額を算出します。
4500万円×1/2(全相続財産に占める全遺留分の割合)×1/3(法定相続分)=750万円
Bには遺贈、Cには遺言がなされており、いずれも相続開始時に効力が生じ、同順位にあります。そこで、Dに支払うべき750万円をBCそれぞれが得た財産額に応じて按分します。
以上により、DはBに500万円を、Cに250万円をそれぞれ遺留分侵害額として請求できます。
遺留分侵害額請求がなされた場合の負担順序や割合について解説してきました。
遺留分についてはその侵害額の計算や財産の評価といった難しい作業以外にも、請求方法やその順序についても細かなルールがあります。遺留分についてお悩みや不安のある方は一度弁護士にご相談ください。