遺留分侵害額請求をされないためにはどうしたらよいか | 京都の遺留分侵害請求の法律相談

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遺留分侵害額請求をされないためにはどうしたらよいか

【遺留分侵害額請求は拒めない】

遺留分は、一定の相続人に最低限の遺産の取り分を認めてその生活保障を図り、相続人間に不均衡が生じないようにするために法律で保証された制度です。つまり、遺留分が侵害された場合に相手に対して侵害に応じた金額を請求できるのは当然の権利なのです。したがって遺留分侵害額請求を拒むことはできません。
しかし、相続が済んで日常を取り戻しつつある中で、突如、内容証明郵便などで遺留分侵害額請求されるのは不穏なものです。
そこで、本記事では遺留分侵害額請求をされない具体的な方法について、相続開始の前後に分けて解説していきます。
 

【相続開始前】

相続開始前であれば、遺言を利用した方法とそれ以外の方法があります。
 

1、遺言の利用

遺言を利用する場合には、「相続分の指定」「遺産分割方法の指定」「遺留分侵害額負担の順序の指定」「遺言の付言」があります。これらは遺言の作成を前提とするので、被相続人の協力が必須です。
 

(1)相続分の指定

相続分の指定とは、被相続人が遺言によって共同相続人について法定相続分と異なる相続分を定めることをといいます(民法902条1項)。
被相続人は遺言で自由に財産を処分することができますが、共同相続人間で大きくバランスを欠く場合は遺留分侵害額請求の原因となります。そこで、遺言作成にあたっては、各相続人の遺留分を計算し、その遺留分を侵害しないように相続分の指定をすることが重要です。
 

(2)遺産分割方法の指定

遺産分割方法の指定とは、被相続人が遺言によって遺産分割の方法を指定することです(民法908条)。
たとえば、「家業を承継した長男には事業用財産を、まだ学生の二男には預貯金を」というように、相続人のライフスタイルに応じた遺産分割の指定を行うことで、相続人間の不満や不公平感を抑えることができ、結果的に遺留分侵害額請求を防止することができます。
ただし、評価額に大きな不均衡がある場合には、将来的には不満を誘発させる恐れがあります。やはり、遺留分の計算を踏まえて慎重に指定を行うべきでしょう。
 

(3)遺留分侵害額負担の順序の指定

複数の遺贈や複数の生前贈与が同時になされた場合(同時でなければ時期や遺贈、贈与の種類によって異なります。)には、遺留分侵害額を複数の者が同順位で負担することになります。このような場合は、原則として、受けた利益の価額に応じて遺留分侵害額を按分して負担します(民法1047条1項2号)。しかし、按分負担とはせずに、負担する者の順位を遺言によって指定することができるのです(同条項号ただし書き)。これが遺留分侵害額負担の順序の指定です。
したがって、同時の遺贈や生前贈与が複数ある場合には、自身を遺留分侵害額負担の最後尾にする旨の遺言作成を、被相続人に依頼するという方法もあります。
 

(4)遺言の付言

遺言書に、相続人に遺留分侵害請求を行使しないよう記載をすることができます。
たとえば、被相続人の財産が一部の受遺者・受贈者による貢献によって形成されたような場合には、遺言書に「財産の形成要因」を記載したうえで「当該受遺者・受贈者に対して遺留分侵害額請求をするのは適当でない」などと付言します。遺留分侵害額請求権者が被相続人の意思を尊重する場合には、一応の意味があると言えます。
ただし、被相続人の要望にとどまり、付言事項に法的には拘束力はありません。
 

2、遺言を利用する以外の方法

相続開始前に、遺言以外で遺留分侵害額請求を防止する方法としては「遺留分の放棄」と「早めの生前贈与」があります。
 

(1)遺留分の放棄

遺留分については、相続放棄と異なり、相続開始前に放棄することができます。要件として家庭裁判所の許可を得ることが必要ですが、遺留分をめぐるトラブルの防止策として他の相続人が理解を示す場合には有効な手段です。
 

(2)早めの生前贈与

贈与を受けた者すべてが遺留分侵害額請求されるわけではなく、令和元年7月1日民法改正により、対象となる贈与は以下の範囲に限定されています。

  • ・相続が開始する前の10年間に行われた相続人に対する特別受益にあたる贈与
  • ・相続が開始する前の1年間に行われた相続人以外の第三者に対する贈与
  • ・贈与の両当事者が遺留分侵害を知りながら行った贈与(期間制限なし)

したがって、贈与をめぐる遺留分トラブルを防止するには「早め」がポイントとなります。ただし、贈与の両当事者が遺留分侵害を知っていた場合には期間制限がないことに注意してください。
 

【相続開始後】

生前における対策がとられず相続が開始した後に遺留分侵害額請求を防ぐ方法としては、「相手が遺留分権利者であることの否定」「遺留分侵害額請求権の消滅時効、除斥期間」があります。
 

(1)相手が遺留分権利者であることの否定

相手の遺留分を否定できる場合として「法定の遺留分権利者にあたらない」「相続放棄」「相続欠格者、廃除された者」があります。
 

①法定の遺留分権利者

相続人であれば誰もが遺留分権利者になるわけではありません。法律上、遺留分権利者は以下の者に限られます。

  • ・被相続人の配偶者
  • ・被相続人の子
  • ・被相続人の直系尊属(父母、祖父母)

被相続人に子や親、祖父母がいない場合には兄弟姉妹が相続人になりますが、その場合でも兄弟姉妹には遺留分は認められていません。また、被相続人に子がいれば直系尊属は相続人にはならず、よって遺留分権利者にもなりません。
遺留分侵害額請求してきた相手にそもそも遺留分が認められているのか、戸籍などの証拠書類を求めて確認しましょう。
 

②相続放棄

相続人は、相続開始があったことを知った日から3か月以内に家庭裁判所で相続放棄の申述をすることによって、相続放棄することができます。相続放棄すると、初めから相続人でなかったことになり、相続人ではない以上、遺留分もありません。また、一旦なされた相続放棄は後日撤回することもできません。
相手の相続放棄の事実を確認した場合には、これを理由に遺留分侵害額請求を拒めます。
 

③相続欠格、相続廃除

相続欠格者も遺留分が認められていません。相続欠格者とは、被相続人の殺害や遺言書の偽造など5つの事由が理由に当然に相続権を失った人のことです(民法891条)。
また、被相続人に対する虐待や重大な侮辱、著しい非行を行った相続人については、被相続人は相続人からの廃除を申し立てることができます(民法892条)。廃除されると相続人ではなくなり、したがって遺留分もありません。
これらに該当する者が請求をしてきた場合は拒むことができます。
 

(2)遺留分侵害額請求権の消滅時効、除斥期間

遺留分権利者が、相続の開始および遺留分を侵害する贈与または遺贈があったことを知ったときから、1年間遺留分侵害額請求権を行使しないときは、権利は消滅します(時効消滅)。
また、相続が開始してから10年間経過した場合も、遺留分侵害額請求権が消滅します(除斥期間)。この場合は客観的に10年が経過したことで足り、遺留分権利者が相続開始や遺留分侵害事実を知ったかどうかは問題となりません。
したがって、これらの期間が経過した場合には権利の消滅の理由に遺留分侵害額請求を拒むことができます。
 

【まとめ】

遺留分を侵害する事実が認められる場合であっても、遺留分権利者が侵害額を請求するかどうかは自由です。請求されない限り、侵害額を支払う必要はありません。
とはいえ、行使されるかもしれないと待ち構えるのも大きな不安です。遺留分侵害額請求されるかもしれないと懸念される方、あるいは、将来の遺留分トラブルをあらかじめ防止したいとお考えの方は、ぜひ弁護士にご相談ください。

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