お金の請求以外に例えば不動産が欲しいなど要求できるか | 京都の遺留分侵害請求の法律相談

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お金の請求以外に例えば不動産が欲しいなど要求できるか

【遺留分減殺請求権から遺留分侵害額請求権へ】

相続人の遺留分が被相続人の生前贈与や遺言による処分によって侵害された場合に行使する権利の内容が、令和元年7月1日の民法改正により変更されました。
 

1、民法改正前の相続

令和元年6月30日以前に開始した相続については、遺留分権利者は、侵害者に対して「遺留分減殺請求権」を行使することになります。「減殺(げんさい)請求権」という名のとおり、法律上の効果を否定し、目的物を直接取り戻すことを内容とします。

具体的に例を用いて説明します。

事例
父Aが死亡した。Aは唯一の財産である不動産を第三者Cに遺言によって遺贈し、その移転登記もなされた。たった一人の相続人である子Bは遺留分を侵害されている状態である。

相続人が子のみの場合、子に認められる遺留分は相続財産の2分の1です。
事例の場合、BがCに対して遺留分減殺請求を行使すれば、Cの不動産所有権はBの遺留分を侵害する限度で失効し、その限りで遺留分権利者Bに戻されることになります。結果、遺贈された不動産の半分がBの所有、残りの半分がCの所有という共有状態になってしまいます。そこで、CはBの持分に相当する価格の弁償金を支払うことで、不動産の返還を免れるという方法が用いられることが一般でした。
 

2、民法改正後の相続

令和元年7月1日以降に開始した相続については、遺留分権利者は、侵害者に対して「遺留分侵害額請求権」を行使することになります。「侵害額請求」、つまり、侵害額に相当する金銭の支払請求権です。
事例の場合ですと、Bは遺留分侵害額請求権を行使して、不動産の半分に相当する価格をCに支払うよう求めることができます。これによって、BCともに望まない共有状態を避けることができ、金銭で解決を図るイニシアティブを遺留分権利者であるBが持つことになります。
 

【金銭以外を要求することの可否】

では、遺留分侵害額請求権に改正された後も、遺留分権利者が、金銭ではなく、対象となっている不動産そのものを希望する場合には要求できるのでしょうか?
 

1、金銭以外を要求する実益

侵害者に豊富な資金があり、侵害額請求に対して直ちに応じることができる場合は問題ありませんが、金銭支払いが困難な場合も容易に想定できます。実際、侵害者が金銭を直ちには準備できない場合には、裁判所に対して期限の許与を求めることができるという制度が法律上準備されています。
また、遺留分権利者が対象財産に特別な価値を認める場合には、金銭の支払いでは意味がありません。
そこで、金銭以外の要求ができないかが問題となります。
 

2、代物弁済

・代物弁済とは

遺留分権利者および侵害者の双方の合意で、金銭の支払いに代えて、問題となった贈与や遺贈の対象不動産そのものを給付することで金銭債務を消滅させることは可能です。この合意を「代物弁済契約」と言います。
 

・要物契約

代物弁済契約は、以前は目的物の現実の引渡しがあってはじめて契約が成立するとされていました(要物契約)。しかし、令和2年4月1日の民法改正により、当事者の合意によって成立する諾成契約と位置付けられることになりました。したがって、両当事者の間で問題となっている不動産によって代物弁済することの合意があれば、所有権は遺留分権利者に移転し、侵害者の金銭債務は消滅します。
 

・目的物

代物弁済の目的物は、遺留分侵害となる遺贈や贈与の対象不動産に限るものではありません。遺贈や贈与の対象が株式、車であった場合はもちろん、侵害者が遺贈や贈与とは関係なく所有する侵害者自身の固有財産を代物弁済の目的物とすることも可能です。代物弁済は侵害額の金銭支払いに代えて当事者間で締結される、新たな契約だからです。
 

3、代物弁済する場合の注意点

・遺留分減殺請求権の場合

以前の遺留分減殺請求の場合、遺留分権利者が減殺請求を行えば、問題となる遺贈や贈与の効果が失効し、その結果、対象不動産の侵害額に相当する範囲の所有権が遺留分権利者に帰属することになっていました。この帰属はあくまでも「相続」によるもので、侵害者から「譲渡」されたわけではないと理解されています。したがって、譲渡所得にはならず不動産取得税はかかりません。また登記については、相続登記と同等の税率による登録免許税(税率1000分の4)を納めれば足りると処理されてきました。
 

・遺留分侵害額請求の場合

一方、遺留分侵害額請求がなされて、金銭支払いに代えて不動産を代物弁済した場合には「相続」ではなく、侵害者から遺留分権者に対する「譲渡」にあたります。したがって、譲り渡した側(侵害者)にとっては譲渡所得、譲り受けた側(遺留分権利者)にとっては不動産取得となり、それぞれ課税の対象となります。また、登記に伴う登録免許税は税率1000分の20です。
遺留分減殺請求から遺留分侵害額請求への変更に伴い、遺留分権利者が不動産を手に入れるためには、以上のような差異が生じたことになります。代物弁済を検討する際には注意が必要です。
 

【まとめ】

遺留分侵害額訴訟をはじめ、民事訴訟には細かで複雑なルールがありますが、話し合いの段階でもこれらルールの理解が大いに役立ちます。とくに遺留分に関するトラブルは、長年にわたる親族間の感情のもつれが作用して紛争が激化するおそれがあり、話し合いの席に着く前に法的ルールに沿った準備を整える必要があります。
遺留分をめぐってご不満や疑問をお持ちの方は、まずは弁護士にご相談ください。

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