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遺留分のよくある相談
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遺留分とは、相続財産の中で被相続人の配偶者、子、直系尊属に留保される一定割合のことをいいます。遺留分の範囲では、被相続人の生前処分及び遺言による処分によっても奪うことはできません。もし第三者または相続人に遺留分を侵害する生前贈与や遺贈がなされた場合には、遺留分権利者はこれらの者に対し遺留分侵害額請求をすることができます(民法1046条1項)。
では、自分が受けた贈与や遺贈が遺留分侵害にあたるとしてその侵害額請求をされた場合、どのように対処すればよいのでしょうか?請求内容について確認すべき事項や実際に侵害額を支払う場合についても解説します。
遺留分侵害請求は裁判上での請求でなくともよく、侵害者に対しての意思表示で足ります。実際には侵害額を請求する旨の内容証明郵便が届くことが多いでしょう。遺留分は法律上の権利であり、もし実際に他の相続人の遺留分を侵害している事実があれば、請求に応じなければならないのが原則です。
ここで注意が必要なのは、相手からの請求を無視してはならない点です。無視し続けると、調停や訴訟さらには強制執行という手続きに発展しかねません。特に内容証明郵便で請求してきた場合には、意思表示を行ったという証拠を残す趣旨と考えられ、相手の態度をより一層硬化させる恐れがあります。
なお、遺留分侵害額請求するかしないかは遺留分権利者の任意です。遺留分を侵害する事実があったとしても、遺留分侵害額請求がなされない限り、自ら進んで金銭を支払う必要はありません。
遺留分侵害額請求された場合には相手の言い分を鵜呑みにせず、その主張が正当なものかどうかを精査する必要があります。ここでは確認すべき事項について説明します。
遺留分権利者は次のとおりです。
遺留分権利者であるかどうかに疑いがある場合には、遺留分権利者であることの証明(戸籍など)を求めましょう。
相手が請求してきた金額が法律に従った正しい計算に基づくものであるかを確認する必要があります。侵害額の支払を行う方向で話を進めていても、具体的な金額をめぐって調停や訴訟に発展することが珍しくありません。相手の算定に不満がある場合には効果的に反論できるように具体的かつ詳細な算定根拠を準備しておきましょう。
相手が生前贈与を受けていたなどの特別受益がある場合には、その財産額を遺留分額から控除するため相手の請求額を減らせることがあります。特別受益の可能性がある場合には、被相続人の預貯金の履歴や不動産登記簿などの調査を行いましょう。
遺留分侵害額請求権は「時効」と「除斥期間」という期間制限があり、期間経過後であれば請求に応じる必要がありません。
遺留分侵害額請求権は、遺留分権利者が相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時から1年間行使しないとき、時効によって消滅します。時効は期間途中に訴えを提起するなどして更新させることができます。
相続開始から1年以内に遺留分権利者が内容証明郵便などで請求をしてこなければ、時効消滅を主張することができます。この主張は時効の完成を主張する旨の内容証明を送る(時効の援用)ことによって行います。
相続開始後10年を経過した場合には、遺留分侵害額請求権は除斥期間によって消滅します。
除斥期間については、遺留分権利者が侵害の事実を知ったかどうかは問題となりません。客観的に10年が経過すれば自動的に権利は消滅し、時効のようにその旨の意思表示は不要で、期間途中で中断されるということもありません。
令和元年7月1日の民法改正よりも前に開始した相続については遺留分減殺請求、改正後に開始した相続については遺留分侵害額請求の対象となり、請求された場合の対応が異なります。
令和元年7月1日より前に開始した相続について遺留分減殺請求権が行使されると、「減殺(げんさい)」という名のとおり、遺留分を侵害する贈与や遺贈は当然に失効します。遺留分を侵害した者は、すでに受け取っている物を遺留分権利者に返還しなければなりません。不動産であれば遺留分権利者へ移転登記、金銭であればその支払をすることになります。ただ、実際には、共有関係の解消をめぐって新たな紛争を生じかねないため、金銭のみによる解決(価額弁償)が多いかと思われます。
令和元年7月1日の民法改正によって定められた遺留分侵害額請求権利は金銭債権です。すなわち、物の返還でなく遺留分侵害額に応じた金銭の支払をすればよいことになりました。
遺留分侵害額請求された場合は侵害額に応じた金銭を支払わなくてはなりません。
しかし、すでに取得した現金を費消したり、取得したのが不動産であったりなど、ただちに遺留分権利者への金銭支払ができない場合は、裁判所による支払期限の猶予を求めることができます。期限の猶予を得ることで履行遅滞による不利益を避けることが可能です。
また、遺留分請求権利者との間で合意すれば、金銭の支払に代えて現物を提供するという代物弁済も認められます。
遺留分侵害額については、その計算方法や遺留分の基礎となる財産額の範囲など法律の詳細な理解が不可欠である上に、株式や不動産など評価の難しい財産が含まれている場合には、正確な算出は困難を極めます。また、遺留分侵害額請求してくる相手は相続そのものだけではなく長年の親族関係に強い不満をもっている場合が多く、当事者だけでの話し合いは難航することが予想されます。
遺留分侵害額請求をされた場合には、相続の専門家である弁護士に相談することをおすすめします。